店舗内装工事の流れと注意点【塗装編】
店舗の内装塗装工事を成功させるには?プロが教える工程と重要な注意点
店舗の内装仕上げを検討する際、「壁紙(クロス)にするか、塗装にするか」で迷われるオーナー様は非常に多いです。特に、お店のコンセプトを表現し、オリジナリティや高級感を演出したい場合には「塗装」が選ばれるケースが増えています。
しかし、塗装は単に色を塗るだけの単純な作業ではありません。美しい仕上がりを長く保つためには、プロならではの緻密な工程と、店舗特有の注意点が存在します。
本記事では、店舗内装における特に壁面、天井の塗装工事の具体的な流れから、後悔しないために知っておきたい注意点まで、現場のプロの視点で詳しく解説します。これから開店や改装を控えている方は、ぜひ参考にしてください。
1.塗装工事の流れ
塗装の仕上がりは、単に色を塗る作業だけで決まるわけではありません。実は「塗る前」の準備が、美しさと耐久性を左右する最も重要なポイントです。
1-1.養生
塗装をしない部分をビニールや専用のテープで保護する作業です。 店舗内装では、床やサッシだけでなく、すでに設置されている厨房機器、造作家具、コンセントプレートなどを汚さないよう、細心の注意を払って広範囲に養生を行います。この作業が塗装の範囲、精密さを決めるといっても過言ではなく、この準備の丁寧さが、最終的な仕上がりの「線の美しさ」に直結します。
1-2.下地処理
塗装面を平滑に整える、仕上がりを左右する最重要工程です。
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パテ処理: 石膏ボードの継ぎ目や釘穴をパテで埋め、平らな面を作ります。
- 粉末パテ、仕上げパテの2段階でパテ処理を行うことが多いです。粉末パテで大きなへこみなどを補正しますが、粉末パテは乾燥時の痩せが大きいため、これだけだと乾燥時にまだ不陸が生じます。粉末パテの後に仕上げパテをすることで平滑な面を得ることができます。
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研磨(サンドペーパー): パテが乾いた後、やすりがけをして段差を完全になくします。 この処理が甘いと、照明が当たった時に壁の凹凸が目立ってしまいます。
1-3.塗装(シーラー・1回塗り・2回塗り)
塗装は基本的に「3回塗り」が標準です。
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シーラー(下塗り): 下地と塗料を接着させる「接着剤」の役割を果たします。また、下地が塗料を吸い込みすぎるのを防ぎ、ムラのない仕上がりの土台を作ります。
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1回塗り(中塗り): 選んだ色を実際に乗せていく段階です。規定の膜厚(塗料の厚み)を均一に確保します。
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2回塗り(上塗り): 仕上げの工程です。色を定着させ、耐久性と美しい発色を完成させます。
それぞれ水性、溶剤系の塗料があり、普通は溶剤系の塗料を「ペンキ」といいます。溶剤系のほうが密着性がよく強固な塗膜を形成することができますが、強い臭いがでるため、内装工事では水性塗料を使う場合が多くなっています。
2.注意点
塗装は自由度が高い分、選び方次第で「イメージと違った」という失敗が起きやすいポイントでもあります。以下の5つの注意点を確認しておきましょう。
2-1.ツヤ(光沢度)の選択
塗料には「全ツヤ(グロス)」から「半ツヤ」「3分ツヤ」「ツヤ消し(マット)」といった段階があります。
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ツヤ消し: 光を反射せず、高級感や落ち着いた雰囲気を演出できます。カフェやアパレル店に人気ですが、摩擦に弱く汚れが目立ちやすい側面もあります。
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ツヤあり: 表面がツルツルするため掃除がしやすいですが、照明の反射が強くなりすぎることがあります。 お店の使用環境(油汚れが多い、お客様が触れやすい等)に合わせて選ぶのが正解です。
業種にもよりますが、基本的には、壁面にはなるべく3分ツヤ以上のツヤを選ばれることをおすすめしています。特に飲食店など油汚れも多い業種では注意が必要です。
2-2.照明による「色の見え方」の違い
塗装で多い失敗が、「サンプル帳で見た色と、実際に塗った色が違って見える」というトラブルです。
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光源の影響: 太陽光の下と、店舗の電球色(暖色)の照明下では、色の見え方は劇的に変わります。
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面積効果: 小さな色見本よりも、大きな壁一面に塗った時の方が色は明るく鮮やかに感じられます。必ず「店舗の照明下」で、大きめの色見本(A4サイズ以上)を確認することをお勧めします。
2-3.塗料の「臭い」とスケジュール
店舗がビル内にある場合や、居抜き物件のリニューアルでは「臭い」への配慮が不可欠です。
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水性塗料の選択: 最近の店舗内装では、臭いが少なく乾燥が早い「水性塗料」が主流です。
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換気と乾燥: 塗装直後は独特の臭いが残るため、オープン直前の塗装は避け、数日間の通風期間を設けるスケジュールを組みましょう。
2-4.メンテナンスのしやすさ
「壁紙」と異なり、塗装は「部分補修(タッチアップ)」ができるのがメリットです。
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お店のオープン後に家具をぶつけて壁が欠けても、同じ塗料があればその部分だけ塗り直して目立たなくできます。
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施工業者から、将来の補修用に「使用した塗料の品番」や「少量の余り塗料」をもらっておくと安心です。
2-5.下地素材との相性
コンクリート打ち放し風に見せたい、木目を活かしたいなど、下地によって選ぶべき塗料は異なります。
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例えば、コンクリート面に直接塗る場合は、アルカリ性に強い専用の塗料が必要です。
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下地との相性が悪いと、後からペリペリと剥がれてくる原因になります。事前に現場の状況をプロに診断してもらうことが大切です。
2-6.白華現象
塗膜に白っぽいもやが生じてしまう現象です。原因は塗装後の塗料中に水分が混入してしまうことです。溶剤系塗料の場合単純な水掛かりの他、溶剤揮発時の表面温度低下による結露の発生もありますので、特に梅雨時期など高温多湿な環境では注意が必要です。水性塗料では白化が起きないかといえばそんなことはなく、乾燥・造膜途中の塗料に水分が混ざるとその部分で正常な造膜が阻害され、入射光が散乱されることにより白いもやとなることがあります。
3.その他
3-1.クロス工事と塗装工事、どっちが先?
どちらも内装仕上げ工事ですが、同じ空間で両方の工事が必要な場合、一般的には塗装工事が先行されて実施される場合が多いです。理由は、クロスが貼られた状態で塗装をした場合塗装によって汚されてしまう場合が多いからです。どれだけ慎重にマスキングテープを貼ってもクロスに滲んでしまうことがあるため、両方の工事を実施する場合はなるべく塗装工事を先行させましょう。
3-2.成分について
塗料は大きく①顔料②溶媒③添加剤④樹脂で構成されています。
顔料:塗料の色彩を作るほか、さび止めとなるもの、塗膜に表情を与える骨材などが含まれます。
溶媒:水性と溶剤に分かれます。溶剤のほうが強い臭気があるため内装では基本的に水性を使用しますが、溶剤の方が耐久性・耐候性・耐水性があり、丈夫で剥がれにくい塗膜を作ることができます。金属、プラスチックには溶剤系でなければ十分な密着性を得られないため、溶剤系が使用されます。
添加剤:塗料の性能を補助的に向上させます。タレ防止、沈殿防止などの効果があります。
樹脂:樹脂の役割は塗料の骨格を作ることです。
大きく上記の4つの樹脂があり、上から下に行くほど高価で長持ちする度合い(耐候性)が上がります。内装ではアクリル樹脂かウレタン樹脂までしか使うことは少ないですが、外壁塗装などではシリコン樹脂を中心としてウレタン樹脂、フッ素樹脂も使われます。
| 樹脂の種類 | 特徴 | 主な用途 | 価格 / 耐久性 |
| アクリル | 安価で施工しやすい | 内装壁面など | ★☆☆☆☆ |
| ウレタン | 万能で密着性が良い | 内装、木部、建具 | ★★☆☆☆ |
| シリコン | 紫外線に強く汚れにくい | 外壁塗装の主流 | ★★★★☆ |
| フッ素 | 極めて高耐久だが高価 | 大型ビル、商業施設外壁 | ★★★★★ |
まとめ
店舗内装における塗装は、単なる色付けではなく、空間の「空気感」を作る作業です。工程の一つひとつを丁寧に行うことで、何年も愛されるお店の土台が出来上がります。
近年では居抜き工事が増えていますが、このような改修工事では塗装後に既存下地からシミが浮き出てくるなど、思わぬ不具合が生じることも多々あります。改修工事は難易度が高い為、経験豊富な業者に依頼することをお勧めいたします。






